昨今、SDGsという言葉だけではなく、ニュースでも取り上げられることが多くなった「カーボンニュートラル」という言葉。皆さんはご存じでしょうか?
日本は、2020年10月に2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、『カーボンニュートラル』を目指すことを宣言しています。(参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略)
この日本のカーボンニュートラルの取り組みは、「企業をはじめ私達一人ひとりが意識をして取り組まないと2050年までに排出ゼロにすることは達成できないだろう」と言われています。
高速オフセットは、2008年にFSC®-COC認証の取得後、廃液を出さない水なし印刷機の導入、植物由来のインキ ベジタブルインキ、フェアトレード紙のバナナペーパーと、印刷に関わる様々な材料から環境に正しい印刷物の研究をしてきました。
今回のコラムでは、
「印刷物の発行を検討しているが、環境負荷のことを考えて二酸化炭素排出量削減の分野にもアプローチしたいと思っている企業の方」向けに、おすすめの用紙を3点ご紹介します。
ぜひ、印刷物仕様検討の参考にしてみてください♪
目次
再生可能エネルギー98%で用紙を抄造。インバーコート
インバーコートは、スウェーデン生まれの厚紙用紙。
マットな質感と高い白色度、そして豊富な厚みから化粧品や食品パッケージに使われることが多い用紙です。
インバーコート、何が環境に正しいのか?その秘密は2つあります。
インバーコートが環境に正しい秘密
その1:1本の収穫に対して3本の植え付けで森林が成長
インバーコートを製造しているホルメンイグスンド社では、日本の長野県と同じぐらいのおよそ130万ヘクタールという広大な森林をスウェーデンに所有し植樹活動から行っているそうなんです。
※写真はイメージ
さらに、森林を用紙抄造の為に1本収穫したら3本を植え付けることで、広大な土地の森林の成長を止めることなく循環をさせているというのも驚きのポイント。
これらの木々は、FSC®認証にも認定されていますし、用紙メーカーが自分達で植樹を行うところからしっかり管理をしているのは珍しいですよね。
その2:用紙は98%が再生可能エネルギーで抄造
インバーコートが作られているスウェーデンの工場では、なんと98%が再生可能エネルギーで発電!そのため、二酸化炭素の排出がほとんど生じずに用紙を作ることができているんですよ。
インバーコートを活用した印刷物例
インバーコートは、3種類の用紙銘柄があります。
・インバーコートG-FS(片面塗工)
・NインバーコートG-FS(裏面微塗工)
・インバーコートM-FS(両面塗工)
それぞれの違いは塗工方法。用紙見本で触ってみると、片面はマットの質感で片面は塗工していないざらざらの質感など、少しずつ質感が違うことがわかります。
最も薄い厚みはインバーコートG-FS K判11㎏。しかしG-FSは片面のみ塗工なため、裏面が隠れるパッケージなどには良いかもしれませんが、両面を印刷する冊子となると表裏に風合いの差が出すぎるので不向きに感じる方もいらっしゃるかもしれません。
両面とも同じ風合いを保ちたいという方は、インバーコートM-FSがおすすめです。
用紙の厚みも、四六判189㎏、223.5㎏、301㎏と冊子の表紙やパッケージにと様々に活用できそうなラインナップです。
「実際に用紙見本をみて検討したい」という方は、ぜひ高速オフセットへご連絡を。用紙見本を一緒に見ながら、営業担当がじっくり相談に乗ります!お気軽にお問合せください。
※こちらの用紙見本は郵送することができません。
用紙抄造時のCO2をクレジットで相殺し地域貢献。ZERO CO2 PAPER
次に紹介したい用紙は「ZERO CO2 PAPER(ゼロCO2ペーパー)」。
ゼロCO2ペーパーの用紙の種類は上質紙、A2コート紙、A2マット紙と、皆さんが比較的聞き馴染みの深い用紙ばかりなんです。
厚みも55㎏~135㎏と一般的な上質紙、コート紙、マット紙ととくに変わりがありません。
では、このゼロCO2ペーパー。他の一般的な用紙と違って、どんな点が環境に正しいのでしょうか?
ゼロCO2ペーパーが環境に正しい秘密
その1:用紙製造時に排出されるCO2をクレジットで相殺
ゼロCO2ペーパーは、用紙製造時に排出された二酸化炭素量を算出しています。J-クレジットの仕組みを使い、二酸化炭素排出量に対するクレジットを購入することで用紙製造時に排出された二酸化炭素量を相殺しています。
つまり、二酸化炭素排出量が実質ゼロにできる用紙なんです。※用紙製造時のみ、印刷時の排出量は含みません。
その2:ゼロCO2ペーパーのクレジットは奈良県 天川村のクレジットを活用し地域創生へ
ゼロCO2ペーパーを使うと、奈良県にある天川村のJクレジットに活用されます。
天川村のクレジットに活用されている理由は、ゼロCO2ペーパーの用紙製造会社「株式会社ペーパル様」が奈良県に拠点をおかれていることからとのこと。
村としては日本一の広さを持つ天川村。奈良県吉野郡に位置し、自然豊かなエリアです。天川村にある大峯山は世界遺産にも登録され、古くから修行道の根本道場として栄えてきました。
そんな天川村では、昔から林業で経済を成長させてきましたが、昨今の木材価格の低迷や林業従事者の減少と高齢化から縮小傾向に。現在の天川村で必要なことは、天川村で生まれた若者が天川村に住み続け、「森の恵み」を活かす産業と雇用を創出することだそうです。
※写真はイメージ
ゼロCO2ペーパー開発担当者の方に、ゼロCO2ペーパーにかける想いを教えていただきました!

印刷物でゼロCO2ペーパーが様々な方の目に触れることで、林業の取り組みを知ってもらうことができると思っています。 そこから、実際に林業に従事している方が「自分達の仕事が世の中のためになっている」と充実感を持つこと。また、林業の取り組みを初めて知って「自分も従事してみたい」と今後の日本を支える子どもや若者たち思ってもらえることで林業のなり手が少しでも増えることを願っています。
実際に、「自分の仕事が社会の役に立っていると感じられることもやりがいになります!」というお言葉もいただき、私たちのやる気にも繋がっています。
今後は規模を広げ、全国様々な地域の取り組みを応援できるようにすることで、「日本の林業を元気にする!」ことを目標としています!
ゼロCO2ペーパーにより相殺されたクレジットは、天川村の木々の手入れの資金にも活用され、森を守ることで二酸化炭素等の温室効果ガスを吸収することに繋がっています。さらにこの「手入れをする」という仕事も天川村の雇用の1つにも繋げられ、林業の価値を上げ、地域創生のプロジェクトとして展開が期待されているんですね。
★天川村とゼロCO2ペーパーの取り組みは下記の株式会社ペーパル様の記事から詳しくご覧いただけます。
「地域と人を未来へつなぐ」ゼロCO2ペーパーでできること|株式会社ペーパル
私たち高速オフセットでは、そんなゼロCO2ペーパーを株式会社ペーパル様より購入し、印刷・加工を行うことでお客様へ製品として納品をしています。
用紙を使用する印刷企業としてゼロCO2ペーパーを活用することで少しでも日本の林業を盛り上げていく取り組みに寄与できればと思っています。
高速オフセットの社内報はゼロCO2ペーパーに変更!
高速オフセットでは、ゼロCO2ペーパーを活用して日本の林業産業、そしてカーボンオフセットの取り組みに少しでも寄与できるように「高速オフセットの社内報をゼロCO2ペーパーへ変更しました!」
用紙はZERO CO2コート 四六判90㎏を使用しています。
ゼロCO2ペーパーを使用した印として「ZERO CO2 PAPER」のロゴマークも掲載しましたよ。
今回の社内報では、ゼロCo2ペーパーを使用し750部発行したことで「CO2重量は200kg」という結果を算出することができました。
この温室効果ガス(GHG)200㎏をGHG吸収クレジット(天川森永遠の森プロジェクト)を使用して、株式会社ペーパル様からカーボンオフセットしていただきました!
高速オフセットでは引き続き自社の印刷物でもゼロCO2ペーパーも使用し、地球環境のことを考えるきっかけをまずは社員全員で共有していければと考えています。
カーボンニュートラルのもう一歩先。150%のCO2を吸収する紙、バナナペーパー
最後に紹介したい用紙は「バナナペーパー」。
バナナペーパーはアフリカ・ザンビアのバナナの茎繊維とFSC®認証パルプを混ぜ合わせ越前和紙の技術を用いて製造された日本唯一のフェアトレード認証紙です。
バナナペーパーが温室効果ガスの観点で環境に正しい秘密
バナナペーパーは生物多様性・貧困・子どもや女性の教育などSDGs17項目全てにアプローチができている用紙です。
そんなバナナペーパーが、温室効果ガスの観点で環境に正しい秘密は、
その1:バナナ繊維はすべてカーボンニュートラルに
バナナペーパーには、バナナの茎繊維が5%と20%入った用紙の2種類があります。
これらの用紙に使われている全てのバナナ繊維はアフリカ・ザンビアで活動している団体BCP(バイオカーボン・パートナーズ™)と連携を行うことで、カーボンオフセットを通じて、CO2を実質ゼロとするカーボンニュートラルになっています。
高速オフセットは2024年3月にザンビア現地を訪れBCPにも訪問してきました。
BCPはザンビアの植林活動を推進し、ザンビアという国全体を森で1つに繋げていくというとても大きなミッションに挑戦をされているようでした。
実は、アフリカは1人あたりの二酸化炭素排出量は世界的にみても最も少ないエリアなんですね。
(参考:3-02 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2021年)|JCCCA 全国地球温暖化防止活動センター )
日本で暮らす私達と比較をするととても考えさせられる時間でした。
その2:バナナペーパー20%の用紙はクライメートポジティブの紙
実はバナナペーパー20%の用紙には、5%の用紙には無い大きな特徴があります。
それは、20%は「クライメートポジティブの用紙」であること。
クライメートポジティブとは、「事業や商品生産における工程で排出するよりも多くのCO2を吸収・固定すると同時に、パリ協定の1.5度の目標に沿って排出量を削減を続けること」。
バナナペーパーの20%の用紙では、ザンビアのバナナ繊維づくりから日本とイギリス工場での紙生産分※まで、全ての工程におけるCO2排出量よりも多くのCO2量を吸収・固定化しています。※配合するFSCまたはリサイクルパルプ分を含む。
参考:Climate Positive クライメート・ポジティブの紙!|株式会社ワンプラネット・カフェ
なんとそのCO2量は150%を吸収しています。
バナナペーパー20%の用紙を使うことで、カーボンニュートラルを行うだけでなく、その一歩先のクライメート・ポジティブとなり、自分達が使う用紙製造時に出たCO2排出量以上のCO2吸収に貢献をしていくことができます。
バナナペーパーを活用した印刷物例
パンフレット、カレンダー、しおり、紙クリップ、ノートなど様々な印刷物にバナナペーパーは採用されています!
★バナナペーパーを使った印刷物例はこちらのKAMIKENサイトにもまとめて掲載しています
バナナペーパー開発商品の一覧|KAMIKEN
高速オフセットはバナナペーパーを推進する協議会「ワンプラネット・ペーパー®協議会」に参画しています。
今後もバナナペーパーを通じて、貧困、生物多様性、地球温暖化等の気候変動問題など様々に起こっている私達地球の問題を少しでも解決に導く取り組みへ真摯に向き合っていきたいと思っています。
どれを使ったらいいの?と迷った方へ
結局どれがいいの?と迷った方は、下記の観点から用紙をチョイスしてみてください。
①作成したい印刷物に合わせて紙を選ぶ
カタログの表紙やパッケージなど、ある程度厚みがある印刷物はインバーコート、バナナペーパーCoC 350g/㎡など。ページ数のある社内報やカタログ等はゼロCo2ペーパー、バナナペーパー。
②貢献したい目的から紙を選ぶ
フェアトレードや貧困問題など、世界の問題解決にアプローチするならバナナペーパー。地域課題にアプローチしたいならゼロCo2ペーパーなど。
③風合いから紙を選ぶ
高級感のある、少し重みのあるような印刷物ならインバーコート。素材感を出したいならバナナペーパー。
「それでも迷う!」という方は、お気軽に高速オフセットの公式サイトへご相談ください!作りたい印刷物の仕様や発行する目的に合わせてご提案いたします。
環境に正しい印刷物をお考えの方は、高速オフセットへ
今回のコラムでは、二酸化炭素排出の観点から環境に正しい用紙を特集してみましたが、いかがでしたでしょうか。
高速オフセットでは、このほかにもアップサイクル紙などの用紙だけでなく、インクや印刷方法など様々な観点から環境のことを考えながら印刷物の製造を日々行っています。
気になるサービスがあれば、ぜひお気軽にお問合せください。
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