食品パッケージや企業冊子などの印刷物で、下記のような2つのマークを見かけたことはありませんか?
この2つのマークは、印刷時に使われるインキの種類を表しています。
左が「ベジタブルインキ(植物油インキ)」、右が「バイオマスインキ」です。ベジタブルインキもバイオマスインキも環境に優しいインキとして印刷時に使われることが多いんですよ!
でもこの2つのマーク、「環境に優しいインキとは分かっているんだけど、何が違って、どっちを選べばより環境に優しいの?」と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本日は2つのインキの違いを私なりに研究しましたので、その見解をお伝えできればと思います!
目次
ベジタブルインキ、バイオマスインキとは?
簡単に各インキについて説明すると、
「ベジタブルインキ(植物油インキ)」とは、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油等植物由来の油など、「再生産可能」な植物由来の油を原料としたインキ。
「バイオマスインキ」とは、綿、パルプ、米ぬか、植物油、被子植物の種などの生物由来の資源(バイオマス)から成分を抽出して製造したインキです。
【結論伝えます!】結局どちらの方が環境に優しいの?
では、各インキについて知ったところで、どちらを選ぶべきなのか。
結論から言いますと、どちらを選んでいただいても環境にやさしいインキです!
え、、、結局その結論か。と思われた方、すみません。
というのも、ベジタブルインキとバイオマスインキで環境に良いとされている植物油の成分量を比較してみましたが、大きな差はなかったのです。
ただ、ひとつ大きな違いを上げるとすれば、運営している団体が違うという点でしょうか。
バイオマスインキは、一般社団法人日本有機資源協会が運営しており、ベジタブルオイルインキは印刷インキ工業会が運営しています。
各サイトを見てみると、
・バイオマスインキを運営している一般社団法人日本有機資源協会の目的は、
本協会は、有機性資源の総合的な有効利用の促進を図り、もって持続可能な循環型社会の構築と環境保全の推進に寄与することを目的とする。
(参照:協会について|一般社団法人日本有機資源協会)
ベジタブルインキを運営している印刷インキ工業会の目的は、
印刷インキ工業会は、わが国の印刷インキ工業の健全な発展を図り、文化および経済の発展に寄与することを目的としています。主な活動として、印刷インキに係わる生産、環境、安全、健康衛生についての調査、国内の自主規格の制定および会員会社への情報提供を行っています。
(参照:印刷インキ工業会|印刷インキ工業会の紹介)
とあります。
つまり、どちらの団体も持続可能な社会や環境推進を広めることを目的としているようですね。
バイオマスインキとベジタブルインキの成分を比較!
では、ここからは上記の結論に至った理由をお伝えできればと思います。
少し専門的な用語も多くなるかもしれませんがご容赦くださいませ・・・。
こちらは、とある「ベジタブルインキ」と「バイオマスインキ」の成分表です。
印刷のインキは、大きく3つの要素からできています。
・顔料
・ビヒクル(合成樹脂、油脂類、溶剤)
・添加物(滑剤、硬化剤)
(参考:古川 豪. 環境にやさしい印刷インキ)
環境問題が叫ばれる以前のインキには、上記成分表に出てくる「樹脂」や「高沸点石油系溶剤」が今以上に含まれているようでした。環境問題が注目されるようになってから、これらの溶剤を低減することが課題になり、ベジタブルインキやバイオマスインキができたようです。
ただ、樹脂や溶剤をゼロにすることはできません。なぜなら、印刷適正(※1)を得るために最低限必要な成分でもあるからです。最低限必要な成分は残しつつ、環境に良い植物由来の油の成分を多くすることで、「バイオマスインキ」や「ベジタブルインキ」などの環境に優しいインキが出来上がりました。
※1 印刷適正…良好な印刷物を得るために必要とされる印刷材料の質。
さきほどの2つのグラフを比較しても、バイオマスインキとベジタブルインキで植物油の成分量は大きな差がないことが分かりますね。 なので、どちらも同じくらい環境に配慮されたインキなのです!
バイオマスインキもベジタブルインキも実は15年の歴史がある⁉
それぞれの団体の公式サイトを見たところ、
・バイオマスインキは2006年に制定
・ベジタブルインキは2008年に制定 されたそうです。
2023年現在、既に15年もの歴史があるインキでした!
ということは、なんと・・・これら2つのインキマークの制度は2015年のSDGsが制定される以前から作られていたインキなんですね。
印刷業界は、ずっと前から環境を意識し、研究を重ねていた業界だったということが言えます。
【印刷機による違い】ベジタブルインキはオフセット印刷機での活用が多い?
それぞれのインキを調べていくと見えてきたことがありました。
それは、印刷方式によって主に使われているインキが違う点です。
ベジタブルインキは主にオフセット印刷機(版に付けたインキをブランケット胴に転写(オフ)し、紙に転移(セット)して印刷する方法)のインキとして使われ、今ではほとんどのオフセット印刷機で使われるインキ銘柄は「ベジタブルインキ対応」になっているようです。
実は、当社のオフセット印刷機では全てがベジタブルインキ対応になっています。冊子やチラシ等はベジタブルインキマークを使用することができますよ。(※ただし、水なし印刷機との併用は不可となります)
バイオマスインキは主にグラビア印刷機(凹版(おうはん)と呼ばれるへこみがある版を使い、へこんだ部分にインクを入れ、印刷する方法)のインキとして使われてきた歴史があるようです。グラビア印刷機は主にナイロンやOPP素材(レジ袋など)のフィルムを刷る印刷機です。
ですので、一般的にチラシや冊子など紙を印刷するオフセット印刷機ではベジタブルインキが使われ、PP素材やパッケージ印刷をするグラビア印刷機ではバイオマスインキが使われることが多かったようです。
しかし近年は、バイオマスインキはオフセット印刷機でも対応できるインキを開発しています。紙媒体にもバイオマスインキを見ることが増えてきていますね。
高速オフセットの印刷機は「ベジタブルインキ」「バイオマスインキ」どちらも対応しています!
いかがでしたでしょうか?
「ベジタブルインキ」「バイオマスインキ」、どちらも環境に配慮されたインキであることに変わりありません。
そして、インキだけに限らず、印刷は様々な観点から環境配慮がされています。それも、近年の環境ブームが始まる以前から環境対策をしていたという点がご理解いただけたら嬉しいです。
最後に、高速オフセットでは「バイオマスインキ」「ベジタブルインキ」どちらも対応できるオフセット印刷機を備えています。
ぜひ環境対応インキを使いたいという方はお気軽にお問い合わせください。
同じカテゴリの記事
バナナペーパーフェス2024出展レポート【バナナ名刺無償提供プロジェクト第二回も実施決定!】
2024.11.25
11月15日にバナナペーパーフェス2024東京が今年も開催!【参加費無料/企業向けセミナーあり】
2024.11.01
【環境・SDGs教育情報誌】エコチル×印刷工場見学会を実施!エコチルができるまでを学ぼう!
2024.10.31
ノベルティや記念品にも!サステナブル紙で作るポストカードの魅力
2024.10.09
毎月1日はあずきの日!小豆柄CoCで健康促進&サステナブル啓発してみた
2024.10.01
【環境印刷】UV印刷と油性印刷の違いとは?UV印刷インキの環境対応マーク「ノンVOC・ノンVOC FREE」も徹底解説
2024.09.17
環境省が定める「グリーン購入法」が改定!適合基準と印刷用紙を分かりやすくご紹介
2024.09.03