株式会社山櫻様は、ワンプラネット・ペーパー®(通称 バナナペーパー)のプロデューサーである株式会社ワンプラネット・カフェ様と共に2012年の開発当初よりバナナペーパー事業展開に携わっています。
近年、環境配慮やSDGsについての話題が増えてきましたが、山櫻様はなんと約30年以上も前から環境に配慮した名刺や封筒を販売されていました。
この度、山櫻様のマーケティング部 村上様と岡田様(以下、敬称略)に「バナナペーパー誕生の道のりと今後の展望」や「社内でSDGsを浸透するための工夫」について伺いました。
Chapter1:山櫻様がバナナペーパー事業を始めたきっかけ
「バナナの茎を使った1枚の紙で世界を変えたい!」が始まりでした
――山櫻様はワンプラネット・カフェ様と共にプロジェクトを進めていると聞いています。繋がりが始まったきっかけを教えていただけますか?
村上:10年以上前に紹介を経て、㈱ワンプラネット・カフェ様と繋がりました。そこで「バナナの茎を使った1枚の紙で、世界を変えたい。一緒にやりませんか?」というお話をいただいたんです。山櫻の社長、市瀬が「ぜひ、一緒に挑戦したい!」とお答えする形で、バナナペーパーの開発プロジェクトが始まりました。
プロジェクトに携わった当初は、バナナの茎を混ぜた「紙」としての製造段階までは出来ていたのですが、すべて人の手で作っていたので、工場もなく品質も含めて全てが手探り状態でした。
山櫻もプロジェクトが発足してから実際にザンビアの製造現場を訪れ、村の視察をし、自分たちの目で現場を見て進めるよう心がけていました。
――バナナペーパーが製品としてリリースできたのはいつなのでしょうか?
岡田:山櫻で最初のバナナペーパーの製品は、2012年8月に発売した「Pamodzi(パモジ)」です。こちらはバナナペーパーでできたメッセージカードと封筒を特製ボックスにいれて、雑貨として販売していました。
※現在は廃番。
次に発売したのが、2013年8月に発売した「Pamodzi(パモジ)メッセージカード」です。こちらは現在でも、山櫻のセカンドブランドである「+lab(プラスラボ)」で取り扱っています。
以上のように、プロジェクトが発足した当初は既製品での販売が中心でした。しかし、バナナペーパーを世の中に浸透させるためには更なる商材への展開が必要ではないかという声もありまして…。
そこで、2013年9月に名刺用紙としての販売を始め、各印刷会社様を通じての普及がはじまりました。
2022年で山櫻がバナナペーパー商品を販売してからちょうど10年になります。
――バナナペーパーは、10年も前からあった製品なのですね!
村上:はい。印刷会社様でお取り扱いいただき始めたのは、約7年前の2015年頃からです。それでも当時の年間発注数は限られていて、世に知られていない商品だったと思います。
――山櫻様としては、いつ頃から世に知られる商品になったと感じますか?
村上:2017年から高校英語の教科書の題材としてバナナペーパーが使われたことが大きなきっかけだと思います。
(参考:Banana Paper 英語教科書に弊社バナナペーパーが登場!)
教育の現場で取り上げられたこともあり、メディアに取り上げられる機会が増えました。特にここ2~3年でのお問合せが増え、成長率は150%ほどになっていますね。
Chapter2:バナナペーパーへの想いと今
バナナペーパーは日本唯一のフェアトレード紙。
「ザンビアの人々の人権を守り、職を守ること」を意識して広めてほしい
――バナナペーパー開発に携わった視点でお伺いしたいのですが、私たちのような「バナナペーパーを使用した印刷物を制作する印刷会社」に向けて、何かお願いしたい点などございますか?
村上:バナナペーパーは、価格が高いという面で皆さまの手に取りづらい点はあると思います。しかし、そのコストには「フェアトレード」という仕組みがあり、価格にきちんと意味があります。
印刷会社の皆さまにお願いしたいのは、「無理な低価格の販売は避けてほしい」こと。
バナナペーパーは日本唯一のフェアトレード紙です。紙については環境部分をピックアップされることが多いですが、「ザンビアの人々の人権を守る」「雇用を生む」ということを意識して広めてほしいなと感じています。
ちなみに、山櫻の社員にも、「ディスカウントして販売するのは違う」と伝えていますよ。
――なるほど。単なる環境配慮紙ではなく、「ザンビアの人の生活がある」という点が、バナナペーパーの特徴ですよね。高速オフセットでも、バナナペーパーに関しては「どこに貢献しているのかを理解していただく」ことを重視しています。お問い合わせをいただき、ご説明して費用にも納得頂けた企業様のみ、印刷のご発注をいただいています。
村上:現時点では費用が高いと感じられるかもしれませんが、今後バナナペーパーの使用量が増えれば、用紙生産量が上がります。そのため、ザンビアからの輸送コストも下がり、用紙の価格にも反映できる時が来るかもしれません。
――山櫻様としては、バナナペーパーはどんな商品が向いていると思われますか?
村上:やはり、名刺ではないでしょうか。名刺は導入するハードルが低いので、通常の用紙の名刺も使いつつ、勝負名刺としてバナナペーパーを使われる方もいると聞きました。
特に配合率20%の用紙は、フェアトレード団体の承認のWFTOや、クライメート・ポジティブ紙※1と人権や環境意識が強いので、バナナペーパーのストーリーに賛同して使われることが多いですね。
※1: Climate Positive クライメート・ポジティブとは?
「事業や商品生産における工程で排出するよりも多くのCO2を吸収・固定すると同時に、パリ協定の1.5度の目標に沿って排出量を削減を続けること」。※国連(UNFCCC)
バナナペーパーを通じて、これまでも様々な気候変動対策を行なってきました。そしてザンビアのバナナ繊維づくりから日本とイギリス工場での紙生産分*まで、全ての工程におけるCO2排出量よりも多く(150%)のCO2量を吸収・固定化しています。
* (配合するFSCまたはリサイクルパルプ分を含む)。
参考:https://oneplanetcafe.com/2021/07/19/climatepositivepaper/
――高速オフセットでも、2022年11月から営業の名刺を全てバナナペーパーに変更しました。営業は多くの人と会うので、ぜひたくさんの企業様にバナナペーパーの取り組みが広がればいいなと思います。
Chapter3:山櫻様のSDGsへの取り組み
「SDGsが日々の業務にどう繋がるか」を自分事としてとらえる
――山櫻様は社内全体でSDGsへの意識が浸透しているように感じますが、社内浸透のために取り組まれていることはありますか?
村上:今はかなり浸透したと思いますが、私たちも最初はSDGsを意識することや、環境に良い製品を使うなど、社員に伝えてもなかなか目に見えて浸透しませんでした。その時に弊社が心がけてきたことは、トップの想いを繰り返し何度も社員に説く機会を作ったことです。
配信だけではなく、座談会や理解を深めた社員による自主的な勉強会開催などですね。
それに加え、「SDGsが日々の生活や業務にどう繋がっているか」を結びつける必要があると感じました。そこで、4~5年ほど前からSDGs169のターゲットを使い、各部署で作る行動目標に紐づけしてもらって、実行するという仕組み作りもしました。
これにより、一般社員にもSDGsや環境意識が浸透していったと思います。
※SDGs17目標の169ターゲットを掲載した教育ツール「Target Finder」
――なるほど。トップの方々の想いを社員全員が理解し、自分事と捉え、目標に沿って実行に移していくことが大事なのですね。
Chapter4:山櫻様の今後について
選択をしてもエシカル、選択をしなくてもエシカル。
2025年までに製品の95%をエシカルに変更
――最後に、山櫻様の今後の展望についてお聞かせください。
村上:2025年までに、弊社の規格品ラインナップの95%をエシカルな素材や製造手法に変更していきたいと考えています。今季では50%を超えるとこまで達成しました。
目指すのは、「選択をしてもエシカル、選択をしなくてもエシカル」。お客様が意識をしなくても、何かしらの形で社会に貢献しているという状況にしたいと考えています。
5年10年を見据えると、Z世代やα世代、具体的には「SDGs教育を受けている方々」が社会に入ってきたときに、モノの見方が変わるかと思います。
今までの経済的価値から、その商品がどういう価値があるのか、社会や企業に何をもたらすのかをしっかり見据えて調達・購買をする文化が広まるのかと。そのようなニーズにしっかり答えられるサービス展開をしていきたいと思います。
そして、弊社もその文化と企業理念に恥じないように、工場、営業展開だけでなく、サプライチェーン含めた全体で確保しながら10年、20年と続けて社会に配慮された企業であると認識いただけるような企業活動をしていきたいと考えています。
――株式会社山櫻様 本日は貴重なお話をありがとうございました!
高速オフセットでは、人と社会に優しい印刷の未来を研究するチームを立て、用紙の研究や協力会社様との意見交換を積極的に行っています。山櫻様より購入したバナナペーパーと当社の生産設備を生かすことで、企業様の名刺・パンフレット・しおりなどを印刷することが可能です。
バナナペーパーにご興味がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
★株式会社山櫻様 公式サイトはこちら
https://www.yamazakura.co.jp/
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